第5回のUTMF(とSTY)は誰も予想してなかったであろう、2次募集という事態になりました。
2次募集の発表当初明示されていなかった、未入金人数と募集定員もその後発表されました。何らかの問い合わせが運営サイドにそれなりにあったのでしょう。
その中には相当数の苦情も含まれていたのでしょう。苦情の背景は、2次募集はしないとしていたことに対するものかと思われます。
2次募集をしないとなれば、秋のビッグレースをどうするか、落選者は考えます。UTMFを狙っていた人の多くは、信越五岳、上州武尊山、KOUMI 100あたりに流れます。距離は短かいですが、ハセツネを勝負レースに切り替えた人もいるでしょう。
事実、上州武尊山の120kmのクラスは、UTMFの当落確定後約1週間で募集定員が埋まり、追加募集したほどです。信越五岳、ハセツネは募集前ですが、武尊山、KOUMIは募集が始まっていましたから、UTMFの落選者でどちらかのレースを検討していた人はエントリーフィーを支払ってしまったでしょう。
100km以上のトレイルレースは20,000円以上のエントリーフィーが一般的です。既に支払ってしまっている以上、UTMFにも支払うという選択ができる市民ランナーはほとんど居ないと思います。両方走る財力はもちろんのこと、武尊山とUTMFとKOUMIはそれぞれ2週間しかありませんから、まずリカバリーしきれません。どちらかのレースは捨てることになるので、UTMFに絞るなら、それ以外のエントリーフィーを捨てるということにもなります。
こういった背景から、運営サイドに不信感を抱き、苦情を言った人もいるでしょう。この心情は十分理解できますが、個人的には、あまり運営サイドを責める気にはなれません。
今回は、運営サイドとしても想定外だったはずです。UTMFといえばUTMBの姉妹レースにして、アジア最大の100マイルトレイルレースです。36,000円という(距離単価でいうと)国内最高のエントリーフィーを支払ってでも出場したいランナーは年々増え続けています。UTMFそのものの人気だけでなく、UTMFのポイントレースにも多くの人が集まります。例を挙げると、おんたけ100kmなどは夜中スタートのメンタル的にもかなり厳しいレースですが、先着順のエントリーが10分そこそこで埋まります。その昔はこんなことはなかったそうです。そういう意味ではUTMFがトレイル業界に与えた好影響は賞賛されるべきでしょう。そんな大人気のレースで、UTMFだけで100名近くの未入金者が出たわけです。
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入金をしたとしても、どうしても直前に仕事が入るとか、故障して出場を断念するというケースはあります。そして当選しても入金しない人はある一定数はいるはずです。エントリーしてから当選発表までに人生の状況が変わる人がいても責められません。前年までの実績を元に何らかの係数を掛けて今年の当選数を決めていると思いますが、想定を大きく超えてしまったというわけです。
では、2次募集をしないと宣言したのだから2次募集しなければ良かったのかと言えば、そうでもないでしょう。事務局は相当悩んだはずですが、結果2次募集する選択をしました。
ひとつには、運営費の問題があります。今回、UTMF50名、STY80名の追加募集を行いました。両方合わせると3,720,000円もの金額です。ランネット(アールビーズ社)にいくらかのシステム利用料を支払っていると思いますが、400万近くの現金収入は見捨てられなかったでしょう。運営に支障をきたすと判断しても良い金額です。
そして何より、走りたいと思っているランナーを一人でも多く走らせてあげたいという気持ちがあったのではないでしょうか。2015年のUTMF公式DVDで、実行委員長の鏑木さんが「運営サイドに回ってみてはじめて、トップが誰かということよりも、一人でも多くのランナーにゴールしてもらいたい、という気持ちになった」と言っていました。
今回の追加募集措置の背景にはこういった運営サイドの気持ちが込められていたのではないでしょうか。